えぞこうきょうよちぜんず

【館内限定】蝦夷闔境輿地全図

1854年(安政元年・嘉永7年)
著者/藤田惇斎、縮図/橋本玉蘭斎、発行/播磨屋勝五郎(江戸)、木版折図・120×95cm

ペリー来航により、箱館の開港、箱館奉行の再設置、松前周辺を除く全蝦夷地が幕府直轄となるなど、1854年(安政元・嘉永7年)は蝦夷地が脚光を浴びる年となった。そのため、蝦夷図の出版が頻繁に行われた。本図もそうした中で江戸の播磨屋勝五郎が発行したもの。地図を制作したのは横浜の浮世絵師・橋本玉蘭斎(歌川貞秀)で、蝦夷地に関する他の作品として「箱館全図 新刻」(函館市中央図書館所蔵)などが知られている。
本蝦夷図は大型の図面に美しい彩色が特徴で、山は濃淡の緑色、平地は赤みを帯びた黄色、道路は朱色である。本州方面からの航路と海里が記され、沿岸渡航用に活用されていたと考えられる。また、樺太(唐太)や千島のアイヌ語地名が海岸線に沿ってびっしりと記されていることから、18世紀末以来続けられてきた徳川幕府の北方探検の集大成ともいえる。なお、ロシア本土の色を違えて描くことで、樺太(唐太)と千島は日本領土であることを主張しているともとれる。一方、7つの方位記号、経緯度が図中に書き入れられているが、蝦夷・樺太・千島列島を一枚に収めるために、南北を圧縮していることから正確ではない。
「口蝦夷」(北海道西南部地域の古称)付近では、「乙部山」「七重山」「エサン山」などの山、「矢越岬」「汐首﨑」「エサン岬」などの岬が詳しく描かれている。

(函館市中央図書館所蔵)

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